シークレットガール!【完】
side.S
「あれ?お兄ちゃんは?志貴くん、知らない?」
晴に似たたれ目な大きな目をこちらに向かせ、彼女は俺に問いた。
「あいつ、送りにいった」
あぁ美沙さんね、と彼女は納得したように、手をポンと叩いた。
「美沙さんってすごいよね」
「頭の中?」
「確かに変人だけどね?そうじゃなくて、行動力とかさ、」
やっぱり晴の妹。
地味にアイツの悪口いいよった。
「…あの行動力はすごいよな」
認めるしかない。
あんな方法で晴を戻すとは思わなかった。
───『あたしは志貴先輩は違うんだよ。なりふり構わずはるるんを助けるよ』
彼女はそう言った。
強い瞳で、決意を固めた瞳で、揺れるような儚げに瞳を揺らしながら。
今思うと、敬語じゃなかったということ。
それだけ本気だったと言うことだ。
どくん。どくん。
心臓がリズムよく大きく音をたてる。
「…………………」
この感じは、知っている。
この胸の高鳴りは知っている。
このドキドキとするような感覚を知っている。
「……………」
さくらが死んでしまって、3か月弱。
こんな早く出来るとは思わなかった。
───『志貴くんを一番想ってくれる子を好きになってくれると嬉しいなぁ。なんか、私みたいじゃない?』
あぁほんとに似ている。
何かがあれとさくらと雰囲気が似ていると思っていた。
それが何となく分かった。
あの自分の意思の強さと、あの儚げな顔、だ。
「……ねぇねぇ志貴くん。美沙さんって、どっちの彼女?」
「は?」
「だから、どっちの彼女なの?あんなに美人じゃん」
見た目だけ、な。
見た目詐欺だアレは。
「…どちらのもんでもねぇよ」
「えー!嘘っ!お兄ちゃん、もう手出してると思ってた!」
この子、その顔で手出すとか何言っているんだ。
こういうところで、晴の妹だと実感させられる。