シークレットガール!【完】
「…さくらさんとの約束が果たせるまで、あたしは頑張るの」
諦めないことを教えてくれた彼女。
それに、彼女はもっと大切なことを教えてくれたんだよ。
彼女と出会って、世界が鮮やかにキラキラと輝いた。
だから、恩返しをしたかった。
彼女の、自分勝手な、押し付けな、悲しい思い残しを取り除こうと。
たとえ、それがどんな結末になろうが、どんな気持ちになろうが、やることはただ1つで。
それは揺るぎないあたしの役目なのだ。
「…大丈夫大丈夫」
それは魔法の言葉。
森羅万象、全てのことに応用できる言葉。
「大丈夫だから」
優季にそう言ったのに、彼の瞳は炎のようにゆらりゆらり、とゆっくり揺れる。
「…お前さ、もっと自分大切にしたら?」
「……………」
何でそんな必要があるの、そう反論しようとしたが、優季の表情を見て言葉を詰まらした。
なんで、優季がそんな表情をするのか分からない。
悲しそうな顔をなんでしているのか分からない。
どんな表情をすればいいか分からない。
あぁ。あの時と一緒だ。
あの銀世界だった真っ暗な、あの時と。お母さんに嫌われてしまったあの時と。
ただ出任せで、陳腐な言葉しか出てこなかったあの時と。
「…うん、」
ほら。あたしは全然成長していない。
またあたしは、大切な人に出任せで陳腐な言葉を並べてしまった。
「ゆ、…うき…………」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
そう思っても言葉が出てこない。
いや、そうじゃない。
出そうとしていないんだ。
出任せで言ったなんて知られたら、嫌われてしまうかもしれない。
もうあたしには優季しかいないから。
恋愛感情とか、そういうのじゃなくて。
もっと大切で壊したくない、家族のような感情。
きっとそれがあたしを邪魔している。
「無理になったら、助けてやるから言えよ」
優季は優しげに笑って、頭をくりゃりと撫でてきた。
「…………っ」
また涙が出てきそうになった。
何回泣かせれば気が済むの。
「…………今日は泊まってやる」
「ありがと………」
優季に一緒に寝てもらって、ついでに手も繋いでもらって。
朝起きたら、手は放されていて、優季の抱き枕になっていた。
また、始まる。
あたしの、彼女への、
悲しい悲しい、押し付けな、自分勝手な、恩返しが。