シークレットガール!【完】
名前で呼んで
「え、無理だって」
「大丈夫。倉條さんならいけるよ」
何を根拠にあなたは言っているんですか。
「ほんとに無理だって!服の方が可哀想になってるっ」
「いや、私たちの方が可哀想だと思うよ?」
知らないがな。
こんな無理出来る無理出来るの攻防を繰り返して、早5分ほど。
相手はまさかのクラスメイト。
こんなにこの子が押しに強いとは知らなかった。
「違う人の方がきっといいよ」
「倉條さんだから、私はこんなに押しているの」
「考え直そう?」
「やっぱり、倉條さんだよ」
「山川さんは?」
「やっぱり、倉條さんだよ!!」
話が噛み合ってないです。
思いっきり、会話のキャッチボールがなってないです。
あれだね。あたしがボールを投げたら、キャッチするんじゃなくて、避けられてる感じ?
いや、むしろグローブじゃなくて、バットを持ってて、あたしが投げる度にホームラン打ってくる感じ?
とにかく、この子ヤバイ。
この子、テストの順位、いつもベスト10には入ってた気がするんだけど……。
「とにかく、あたしは山川さん推し」
「私は倉條さん推し」
「…………………」
時計をチラリ見ると、この会話を始めて10分が経過しそうだ。
何をこんなに頑(かたく)なに主張しているのかと言うと。
「メイド服っていうのは、可愛い子に着せるべきだよ。あたしには無理だよ」
文化祭にメイド服を着れくれ、と言われているからである。