シークレットガール!【完】
急に捕まれた手が離され、その手がマッハのスピードで、あたしの腹に向かう。
この男が恐れられている理由が分かった。
喧嘩慣れしてる。
そして、この顔。この名前。
しかも、全国有数の進学校。
恐れられて当然だ。
だけど、あたしも舐めてもらっちゃ困る。
あたしだって、お母さんに認めてもらおうと頑張ってたんだ。
なら、その中に武道系の習い事があっても可笑しくないと思わない?
──ダンッ!
廊下に響く、重い音。
目の前にいた男は、今は下にいる。
廊下にうつ伏せで倒れる男は、痛そうに腰をさすっている。
ばかだなぁ。この人。
こんなギャラリーの中、あたしを誘ったのが間違いだったね。
「喧嘩慣れしてるのに、受け身をとれないとは、……少し残念」
「なっ、……………」
男は恨めしそうにあたしを見上げる。
あたしは悪くないあたしは悪くない。
これ、正当防衛だし。てゆーか、反射的だったし。
あいにく、カバンも持ってこずに学校に来たため、湿布なんてあるはずない。
「先輩、保健室に行っといた方がいいですよ」
うん。カナちゃんのお色気に治してもらってらっしゃい。
志貴先輩もいないことだし。……てゆーか、この人の情報だし、本当か怪しいけど。
まぁ疲れたし、帰りましょっかね。
踵を返そうとした。その時だった。
「美沙っ、!?」