シークレットガール!【完】
カチューシャを正すと、はるるんがスマホであたしを連写している姿が目に見えた。
「えっ、…と」
志貴先輩のみをロックオン。
ゴホン、と咳払いを空気を正した。
大きく息を吸って、…美沙ちゃんファイト!
根性の見せどころだ!
「いらしゃいませ!ご主人様(はーと)」
「……………」
「お風呂にしますか?ご飯にしますか?それとも、……あ・た・し♡?」
「……………」
ブッという声がはるるんのマウスから聞こえて、彼を睨んだ。
一方、志貴先輩はというと冷たい眼差しであたしを見ていた。
「……………………」
「…………………」
「……………………………」
「……………そんなに見ないでください。恥ずかしいです…」
見定めですか?やーんエッチー。
「…晴、行くぞ」
「そーだねー」
彼の一声で、二人は出口に向かう。
「ちょっと待って下さい!悪ノリしてましたっスイマセンッ」
少し調子乗ってました!ごめんなさい!
「…………ん。なら、普通に案内しろ」
やけに普通という単語を強調する志貴先輩。
気になったけれど、あたしは二の舞をしないため、スルーして彼らを手招きする。
「いらしゃいませ。二名様ですね。こちらへどうぞ」
案内して、メニューを渡す。
「注文が決まりましたら、教えてください」
という言葉を被せるように、
「決まった」
という彼の言葉が発せられた。
早っ。
志貴先輩、メニュー開いてないじゃん!
千里眼かよ。ここはファンタジーかよ。