シークレットガール!【完】
「ご注文は何でしょうか」
笑顔で、そう彼に聞いてみる。
好きで好きで堪らなかった彼。
いつ見ても、その顔は大人っぽくてクールでドライ。
そんな彼があたしは大好きなのだ。
「オムライス。そこの奴が食べてるヤツ」
きゅん。
やっぱり、志貴先輩はギャップをついてくる。
もう何々この可愛い趣味!胸キュンだしっ!
もう胸キュンどころじゃないね。胸ドッキューンだ。
「かしこまりました。はるるんは何?」
「じゃー、志貴と同じでー」
「分かった。…じゃあ、志貴先輩。ゆっくりおくつろぎください」
わー俺だけむっちゃ塩対応ー、と嘆くはるるんを背にあたしは注文を調理班に伝えにいった。
「……………はぁ」
なんか忙しい。
「おい、」
「何?優季」
「疲れたなら、休めよ」
何度その言葉を聞いたことか。
飽きたよ飽きたよ美沙ちゃん飽きたよー。
「へーへー」
空返事をすると、彼は少しあたしを睨んで、料理を運んでいった。
「……………………」
なんかなぁ……。文化祭って楽しいイメージしてたんだけどなぁ…。
事が事なのかなー。
心から楽しめてない。
最後だっていうのに。
意外とあたし繊細だった感じ?
…ほんっと、めんどくさい性格をしてるよね、あたし。
ふつふつと、自己嫌悪が沸き上がる。
「倉條さんっ、これ5番テーブルに運んでくれない?」
「うん。了解」
差し出されたパンケーキ。
それを落とさないように慎重に受け取った。