シークレットガール!【完】



「終了です。叩くのをやめてください」


残すはあと結果のみである。


「ただいまの結果は、左の彼女さんの方の勝ちです」


「よっしゃ!」


「……………チッ。もう一回だ」


「ほんと、諦め悪いですね。先輩」


「るせぇ。もう一回しろ」


「はいはい。…あの、もう一度、できますか?」


もぐらたたき司会役の子に聞くと、少し罰が悪そう。


あ、そっか。


その理由に気づいたときは、もう鳴っていた。




『キーンコーンカーンコーン』





現実に戻すいつもの鐘の音。


『文化祭終了です。生徒の皆さんは、電気を消し、グラウンドへ。ただいまから後夜祭を始めます』


鐘の音に続く、アナウンス。


「志貴先輩、残念ですね。後夜祭です」


「…そうだな」


悔しそうに納得する彼。


「グラウンドに行きましょうか」


「あぁ」


もぐらたたきの人たちに軽く会釈をして、教室を出た。


ぞろぞろ、と生徒がグラウンドに向かっていく。


「志貴先輩?」


その人の波に逆らって、足を止めるドラキュラさん。


見た目も目立っているのに、行動も目立っている。


「晴と約束してんだよ。お前も来るか?」


はるるん、ね。


「じゃあ、先輩の送り迎えでもしましょうかね。お供します」


「ん、」


人の流れに逆らって逆らって。


向かった先は3階校舎2階にある志貴先輩たちのクラスのお化け屋敷。


終わりほど呆気ない。


人の波に逆らったからかして、かなり時間がかかって、3年校舎に着いた頃には、あたりには人がいない。


グラウンドから聞こえる笑い声が酷く遠く感じれる。










まるで、あたしと志貴先輩だけの、世界。





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