シークレットガール!【完】




勢いよくトイレの戸を閉め、鍵を閉めた。


へっ。ざまぁみろ。あたしの勝ちだよ。


チッ、という舌打ちが聞こえて、リビングに戻っていこうとする足音。


そのとき、昨日見た折り込みチラシを思い出した。


「優季ーー、放課後コタツ買いに行こーー。いつも行くスーパーの近くのお店で、自宅まで無料配達してくれるんだってーーー」


「トイレから叫ぶな」


「ひっど!まだ怒ってんの!?シャーペンくらい何でもいいじゃん!中学校からし、古いじゃん!」


「あれはお前が誕生日にくれたや、……………あっそ。何でもない。分かった分かった放課後な」


「エッ!?あたしが誕生日に何!?何やらかしたというの!?優季のケーキの上のチョコ貰ったくらいで根に持ってんの!?」


「………………」


あり得ない、そんか彼の脱力した声と共に、どんどん足音が遠のいていく。


「あり得ないのは、優季の溢れんばかりのシャーペンとケーキの上に乗ってるチョコへの愛だしっ」


なんなのほんと。


なんか、あたしが悪いみたいじゃん。


ぷんすか、ぷんすか。


怒りながら、トイレから出て、学校に行く準備。


この頃冷え込んできて、最近から貼るカイロが手放せなくなって、もちろんセーターも着用。


制服の上からもコート着用。


マフラーもして、手袋もして完全防備。


「まだか?電車遅れるだろ」


「急いでるって!あたしなりに急いでる!優季も女の子を急かさないの!」


「…………ゴリラだろ」


かちーん。


いつかのはるるんの言葉と全く同じで、美沙ちゃんオコですよ!


残すところは手袋とマフラーのみ。


それを持って、優季の待つ玄関に向かう。


その途中で、手袋を着けて、………


「……………って、あ」


重大問題に気づきました。




「アントネット・スカーレット・スフィーヌ・ノア・ブリュッセル………………」







そう呟いた瞬間、目の前から眼光冷凍ビームがあたしに、向けて発射された。






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