シークレットガール!【完】
熱演をスルー…マジで塩対応。
全国の皆さん、これが橋本優季というヤツの本性というやつよ。
学校で、紳士!素敵!イケメン!優しい!おとぎ話の王子様みたい!と言われているヤツの本性よ。
優しい人ほど、裏がある。
是非とも優季くんスマイルに胸をズッキュン打たれた女の子達に教えてあげたい。
「けちんぼ」
アントネット・スカーレット・スフィーヌ・ノア・ブリュッセルを握りしめて、先を急ぐ。
あたしの数少なく友達を探してブリュッセルを巻いて欲しい。
お!あれは!前方約7メートル!
優季の唯一の男友達の、
「相川くーー、「美沙」
相川くんの名前を叫ぶ口が大きな冷たい手に後ろから覆われて。
背中から伝わる彼の体温は、温かい。
あたしの手から引ったくるようにブリュッセル取った彼。
そして、彼は、アントネット・スカーレット・スフィーヌ・ノア・ブリュッセルを乱雑にあたしの首に巻き付けた。
べ、別に後悔なんてしてないし?
手袋脱いで、やった方が絶対綺麗に巻けたとか、手袋したまま我慢して、やった方が綺麗に巻けたとか、思ってないからね!
あたしは、ちゃんとした人だからね!善意を踏みにじるようなことはしないからね!
「…ありがとうさぎんなん!」
「…ん」
………………。
ゆっくり手をマフラーに伸ばして。
「お前、ぶん殴るぞ」
「やだやだやだ」
マフラーを取って、また10秒前に巻き戻し。
今度は誰かに頼むのではなく、手袋をしながら、我慢してマフラーを巻く。
「出来るなら頼むな」
「やりにくいから、頼んだの!」
あたしだって、優季がマフラー巻くの下手くそだとは思わなかったよ!
学校までの15分間。
アントネット・スカーレット・スフィーヌ・ノア・ブリュッセルについての口喧嘩をしていたのは、言うまでもないだろう。