シークレットガール!【完】





*****



「テスト、終わったぁあああああ!!よし!今夜はおでんだ!」


「…豚汁がよかった」


残念です。今日は絶対おでんです。


「よし!帰り道、おでん具材買おう!……あああ!けど、こたつ買う用意が!」


「おでんは諦めろ。おでんは明日」


「…………はーい。じゃあ、今日はサンマと豚汁とー、おでん風煮込みとー、ほうれん草のおひたしにしよう」


「ん」
 

それを聞いた優季は満足げに、コートを着始めた。


「美味しそうっ!みーちゃん家のご飯は今日和食だね!」


きゃっきゃきゃっととなりでショートのふわふわとした髪を揺らす女の子。


ほんと可愛い。


このクラスで美人といったら、山川さんだけど。


このクラスで可愛いといったら、この子。


「ありがと、果奈。今夜、あたしん家来てご飯一緒に食べる?」


「ううん、そうしたいんだけど…夜は今回のテストの復習をしたいから、……ごめんね?」


申し訳無さげな表情。上目使い。


「果奈が可愛すぎてどうしよう!」


「みーちゃんの方が可愛いよ?それより、みーちゃん。最近、学校や──



「──栗田さん。美沙、借りていいかな?」




彼女の言葉を遮って割り込んできた優季。


話に口を割ってはいる。


英語で、言うと“cut on in ”。


ちなみに一昨日のコミニケーション英語のテストで出てきた英単語だ。


テスト気分からまだ抜けれない。


テスト後あるあるである。


「優季、準備早いね。ごめんね、果奈。話の続きなんだったの?」


あたしは、知っている。


こう聞けば彼女が、


「ううん。何でもないよ。ストーカーに気を付けて帰ってね」


と返してくれる、と。


けど、


「なぜにストーカー?ここは車でしょ」


「みーちゃんには車にヒヤヒヤするより、ストーカーにヒヤヒヤする方が絶対多いもん!」


「え。ストーカーなんて、された経験ないんだけど」


した経験は、たくさんあるけど。


「えっ、嘘。だって、前、橋本く、「栗田さん」


優季は紳士スマイルをしながら、自分の唇に人差し指を置いた。


これが、彼の惚れ込ましの技である。


そんな彼の動作に、あたしの友達はノックアウト。



「はははは橋本くん!みーちゃん!また明日!」



彼女は風のように、廊下に吹き出ていった。








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