シークレットガール!【完】
ちらりと目の前に座る彼を盗み見る。
綺麗な黒い髪。
健康的な白さで、キメの細かい肌。
無駄に長いまつ毛。
綺麗な真っ黒な瞳。
綺麗なさくらのピアス。
全てが儚いように感じた。
彼の黒の瞳はノートからあたしへと視線を流した。
その動きが少し色っぽくて、少し胸がどきんと鳴ったのは、きっと気のせい。
「……おい」
「………なんですか?」
「…お前特待生なのか?」
「なななななぜそれを‼」
イヤホンしてたはずなのに。
ちゃんと確認したしたけど‼?
何故だ。何故なのだ。
脳内プチパニックを起こしていたが、その答えはすぐに明かされた。
「音楽、聞いてねぇ。お前が煩いから無視するために付けてた」
マジですか。さいですか。
うん。一言いいかな。
誰かあたしを慰めてくれませんか。
もう心が痛いんだけど。
無視したいからイヤホン付けてたとか、マジで泣けてくるんだけど。
「どうしようはるるん。あたし、ゴキブリになりきりたい…」
そうしたら、人々が日頃ゴキブリにする撲滅行為の方がこの傷より深いことを知り、立ち直れるかもしれない。
ほらよく言うじゃん。
人の不幸は甘い蜜って。
あたしの場合はゴキブリの蜜だけどね。
ゴキブリについて語っていると、ぽんっと優しく肩を叩かれる。
顔を上げて、肩を叩いてくれた人を見て、あたしは絶句。
肩を叩いてくれるなんて思ってなかった人物だったから。
目の前の彼はゆっくりと口を開く。
どきどきどき。
心臓が早く打つ。
数秒のことのハズなのに数分のように感じた。