シークレットガール!【完】
side.Y
「……………」
くるり。手元にあるシャーペンを回してみる。
俗に言うペン回しをしてみたが、あえなく撃沈。
シャーペンは、机に落ちてしまった。
「……………」
少し恥ずかしくなって、シャーペンを握り、授業に集中してみる。
並べられる日本語。
2年生から習う世界史の授業。
字が綺麗すぎて、黒板が見やすすぎる。
綺麗に羅列される文字は、この先生の特徴だ。
「……………」
あと、少し。
やっぱり、考えてしまうのはいつも美沙のことで、どうしようもなく感情が胸に詰まる。
アイツのために何が出来るのか。
そんなことは、とっくの前に分かっていた。
俺の願いとは、正反対を望む彼女。
恐怖しかない漆黒の世界へ怖じけながらも駆けていく彼女。
俺の願いと正反対を望む彼女。
それが嫌だった。
だから、彼女の願いが何か分かっておきながら知らないフリ。
傲慢で自己中。
クソな教師がいうように、優しさなんて微塵もない。
むしろクソ教師の方が優しい。
「………………」
外で、さくらの花びらがゆっくり地上へと落ちていく。
ただ、それが美沙のようで。
─『美沙。Ephemeral って、どういう意味?』
─『辞書引いてよー。めんどくさい。』
─『忘れた』
─『もうもう。歩く辞書な美沙ちゃんが答えてあげよう!!』
─『……………』
─『無視なの‼?無視なの‼?ここは、ヨイショでしょーが!』
─『美沙チャン、ステキースゴイネー』
─『うむ。苦しゅうない。Ephemeralの意味は、
─────儚い、だよ』
いつの会話だっただろうか。
彼女が顔を歪めながら発した言葉が空気に溶けたのは。