シークレットガール!【完】




***



ひゅーひゅーと風が吹く。


いつもより強い風が吹いているように感じるのは、ここが他より高い位置にあるからだろうか。


綺麗な青の空が見える屋上。


少し遠くには灰色の雲。


あたしたちの目の前は、フェンス越しにグラウンド。


そして、手には双眼鏡。


「カナちゃん。この双眼鏡は何かね?」


「元カノにもらった誕生日プレゼント」


「へぇ。元カノさん、なかなかいい趣味してるね、……じゃなくて!」


「んだよ。バレちまうだろーが」


「バレちゃうとかじゃなくて!」


「じゃなくて、なんだよ」


横に並ぶ彼は流し目であたしを見た。


少し胸キュンと思ってしまって、悔しくなって彼の足を踏んでおいた。


「いってーなオイ。とにかく落ち着け黙れ動くな息するな死ね」


「どんどんハードル上がってない‼?てゆーか、もう死ねとしか言ってない」


「グチグチうるせぇんだよガキが」


「………………」


矛盾しか感じれない。


吐息を吐いて、あたしもカナちゃんと同じ体制に入った。


目に神経を集中させて、レンズを覗く。


そこには、志貴先輩とはるるんの体操服姿。


「……………うん。やっぱ、ごめん。ストーカー行為としか思えない」


「ぁあ?お前がやりてぇって言ったから、やってんだろ。お前が止めてどうすんだよ」


「どうもしねぇよ。てか、そんなの言った覚えもない」


「脳みそ撒き散らせて、いつの記憶か教えてやろーか。オラ、頭寄越せ」


「誰が寄越すか。…ねぇ、マジで止めない?」


「は?お前、『見てるだけでもいいから、会いたい』って言っただろ。ウソをつくな」


「いや、こんな形で見てるだけなんて嫌なんだけど‼?」


何この人。人のシリアスな発言をアホ解釈やっちゃってるんですけど。


悪意しか感じられないんですけど。


「その、ストーカーチックな方法でしたいと言ってもないんですけど」


「ぁあ?これが一番楽しいんだろ?お前。よくしてたじゃねぇかよ」


いや、してたけども!!好きでやっていたわけでもなくてね‼?おーけー‼?


「…仕方ないと言うか、なんと言うか」


そうでもしなきゃ、志貴先輩があたしの相手をしてくれなかったからであって、…。


「断じてそういう趣味はないです」


「嘘だな」


「即答かい。卍固めするぞオラ」


「お前、SMプレイどんだけ好きなんだよ」


哀れみやドン引き。あらゆる誤解から生まれた感情の籠った目だった。


「………………」


もう、何も言うまい。




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