シークレットガール!【完】
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ひゅーひゅーと風が吹く。
いつもより強い風が吹いているように感じるのは、ここが他より高い位置にあるからだろうか。
綺麗な青の空が見える屋上。
少し遠くには灰色の雲。
あたしたちの目の前は、フェンス越しにグラウンド。
そして、手には双眼鏡。
「カナちゃん。この双眼鏡は何かね?」
「元カノにもらった誕生日プレゼント」
「へぇ。元カノさん、なかなかいい趣味してるね、……じゃなくて!」
「んだよ。バレちまうだろーが」
「バレちゃうとかじゃなくて!」
「じゃなくて、なんだよ」
横に並ぶ彼は流し目であたしを見た。
少し胸キュンと思ってしまって、悔しくなって彼の足を踏んでおいた。
「いってーなオイ。とにかく落ち着け黙れ動くな息するな死ね」
「どんどんハードル上がってない‼?てゆーか、もう死ねとしか言ってない」
「グチグチうるせぇんだよガキが」
「………………」
矛盾しか感じれない。
吐息を吐いて、あたしもカナちゃんと同じ体制に入った。
目に神経を集中させて、レンズを覗く。
そこには、志貴先輩とはるるんの体操服姿。
「……………うん。やっぱ、ごめん。ストーカー行為としか思えない」
「ぁあ?お前がやりてぇって言ったから、やってんだろ。お前が止めてどうすんだよ」
「どうもしねぇよ。てか、そんなの言った覚えもない」
「脳みそ撒き散らせて、いつの記憶か教えてやろーか。オラ、頭寄越せ」
「誰が寄越すか。…ねぇ、マジで止めない?」
「は?お前、『見てるだけでもいいから、会いたい』って言っただろ。ウソをつくな」
「いや、こんな形で見てるだけなんて嫌なんだけど‼?」
何この人。人のシリアスな発言をアホ解釈やっちゃってるんですけど。
悪意しか感じられないんですけど。
「その、ストーカーチックな方法でしたいと言ってもないんですけど」
「ぁあ?これが一番楽しいんだろ?お前。よくしてたじゃねぇかよ」
いや、してたけども!!好きでやっていたわけでもなくてね‼?おーけー‼?
「…仕方ないと言うか、なんと言うか」
そうでもしなきゃ、志貴先輩があたしの相手をしてくれなかったからであって、…。
「断じてそういう趣味はないです」
「嘘だな」
「即答かい。卍固めするぞオラ」
「お前、SMプレイどんだけ好きなんだよ」
哀れみやドン引き。あらゆる誤解から生まれた感情の籠った目だった。
「………………」
もう、何も言うまい。