シークレットガール!【完】
「…………お前、これで満足なんだろ?」
ニヤリ彼は口角を上げた。
双眼鏡で、グラウンドを見下げる彼。
あそこの女子、胸でけぇな。なんて、言っている彼は、双眼鏡の用途を間違っているに違いない。
さすが劣化版はるるんである。
「………カナちゃん」
「んだよ」
「………ほんっと、性格悪い。大嫌い」
「知ってる」
「…………………」
白衣に双眼鏡。そのレンズが向いているのはグラウンド。
そこには、1年間仲良く一緒にいてくれた彼らがいて。
「お前、本当に会いたいんじゃねぇんだろ?」
確信つく彼の言葉に言葉を詰まらせた。
「………………もし、そうだとしたら、カナちゃんはどうしてくれるの?」
馬鹿だと思う。
自分でも馬鹿だと思う。
けれど、そうしなくちゃ自分が壊れちゃいそうで怖い。
思い出にしがみつくなんて、現実逃避に等しい行為。
けれど、それに気付きながらしがみついてしまうのがあたしだ。
「お前って、バカだよな」
「………………」
「会いたい、なんて嘘を嘘ですって顔をしながら、平気で言う」
────『お前のそんな表情初めて見たわ』
ねぇ、カナちゃん。あたしって、あの時、どんな顔してたの?
どんな酷い顔をしてたの?
“忘れて欲しくない“だなんて。
無理不可能なことをどんな顔で望んだのだろうか。