シークレットガール!【完】



***


いつの頃だっただろうか。


外を眺めるしか出来なくなったのは。


「入るわよ、美沙ちゃん」


「どうぞ」


入ってきたのは、鈴村さん。


真っ赤な唇に上品な雰囲気が印象的な大人の女性。


ナース服を着ている彼女は、無駄に色気を出している。


もうもう。だから、となりの部屋の田中さん(85)があたしに今時のラブレターの書き方を聞きにくるんだよ。


おじいちゃんまでたぶらかしてどうするの、ほんと。


「美沙ちゃん。薬飲んで貰える?」


「嫌って言っても無理矢理飲ませるじゃん」


「だって、そういう仕事だもの」


薬と水を差し出されて、仕方なく飲み込んだ。


「注射していいかしら」


「ほんっと、注射だけは勘弁して欲しいんだけど。注射?ちょっと待ってよ。なんで針を体にぶっ刺すの?なんで、謎の液体を体に入れるの?何?バットサイエンティストのマネ?他でしてよ。なんなのなんなの。ほんと、注射ってあり得ない。誰がこんなん生み出したの。生み出した奴、世界中の注射嫌いっ子に土下座して謝れ」


「言い残すことはそれだけかしら?」


「なんで、それが遺言になるの!」


怖い!鈴村さん怖い!鬼!


「鈴村さん、ハウス!」


「……頭に刺すわよ」


「それ、犯罪です」


「煩いわね。早く手出しなさい」


「うぅー、…鬼、鬼畜、性格破綻者、クソババァ、死ね、んでまた生き返って優しさを知って、非道、………痛い痛い痛い痛い痛いっ!」


「あと少しだから黙って。……はい、終わった」


「痛かった。ほんと、注射だけは嫌だ」


「はいはい。優季くんに慰めてもらってちょうだい」


「うん。そうする」


「優季くんの優しさに漬け込んで、お菓子を作らせちゃダメだからね」


「ゲッ、…エスパークソババァかよ」


これだから、ロボットさんは困った困った。


「お昼にまた来るわよ」


「来なくていいッス」


「じゃあ、またお昼に」


聞いちゃいねぇよこのオネエサン。


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