シークレットガール!【完】
もともとは元気な普通のどこにでもいる女の子だった。
けれど、ある日突然倒れて、起きたら不治の病です、と宣告されて。
それから病院生活が始まって。
学校にあまり行けなくなった。
別に苦しいとか死にそうな体験があった訳じゃない。
確かにちょっと体調を崩したりするのは多かったけど。
歩けるし、走れるし、スキップも出来る。
なのに、ずっとベットの上で過ごさせられた。
不思議だった。
自分が病気だ、ということ自体、本当なのかよく分からない。
今ここでドッキリでしたー、と言われても、信じてしまうほど実感がない。
…………というのが、1か月前のあたしだ。
1ヶ月前に倒れてから、体が可笑しい。
急に息苦しくなる。
急に視界が真っ暗になる。
急に平衡感覚が無くなる。
立つのが苦しい。
動悸が収まらない。
先生によると、もう体が病気の進行に耐えられないとか、なんとか。
しっかりしろよ、あたしの体。
なんて、思うがどうやらあたしの体は限界らしい。
余命5ヶ月。
と。宣告されたのは1か月前。
手術をすれば、1年くらいは延びるらしいが、麻酔注射も受けなきゃいけないし、それに生きてても意味もない。
丁重に手術を断っておいた。
「まだ遅くない」
「だから、言ってるでしょ。受けないって」
優季はあたしに手術を受けて欲しいらしい。
彼にとってどんなメリットがあるのやら。
あたしが居なくなれば、やっとあたしから解放されて嬉しいはずなのに。
彼の真意は未だ分からない。
「あ、そうだ。優季。あのね、前漫画で読んだんだけど、第2ボタンちょうだい!」
「はっ‼?」
バッと立ち上がって、真っ赤な顔を手で隠す彼。
優季って、謎のタイミングで顔真っ赤にする。
もう特技だよ特技。
あたしなんて、恥ずかしくない限り、真っ赤にしないよ。
「な、なななんでそんなこと、言うんだよ」
「なんかね!なんかね!第2ボタンを貰うのが卒業式の習わしなんだって」
「…………………」
「…あ、嫌だったらいいよ」
「………お前、その漫画ペラペラっとしか見てないだろ」
「え?よく分かったね。さすがアレニウスくん」
「…………チッ」
なんなんだよ、とブツブツ呟きながら、彼は第2ボタンを無理矢理取る。
「ほら、貰え」
「ありがと!家宝にする!」
「あ、っそ……」
彼が少し嬉しそうに、顔を背けたをバッチリ確認して、私も少しだけ嬉しかった。