シークレットガール!【完】
とある秋の日の出来事
【はるるん×美沙ちゃん】
先輩/後ろからギュッ/放課後
**
「はるるんるんるるんるんっ♪」
るんるんるんっ。
スキップをしながら、即興曲を唄う。
作曲者、倉條美沙。ミサターン第2番変ホ長調……なんちゃって。
今からクレッシェンド!今からフォルテ!!
「はるるんるんっ!るんるんるんっ!はーるるんるるるるるるーん♪」
徐々に大きくなったあたしの歌声に不快を抱いたのか、彼は少し眉間にシワを寄せた。
「人のあだ名で歌わないでくれるー?」
ダイナミックな草原を想像していたが、彼の言葉により一瞬にして焼け野原。
どうしてくれんねんワレぃ。
「最近の子は細か過ぎなんだって。細かすぎて、みじん切りに出来そうだよ」
「美沙ちゃんがみじん切りにされたら世の中平和だよ」
「うん。1回考え直そっか」
なんつー怖いことをお考えになっちゃってんの変態さん。
あまりの恐怖に即興曲が出来なくなっちゃたじゃんか。
空を見上げると、青空。秋晴れというもので。
志貴先輩は、と言うと、補習中。
秋の風に吹かれ揺れるミルクティー色の彼の髪は、日に透け金色に輝く。
禿げのオジサマのツルピッカを見ているように眩しい。
ぷいっ。
あたしはそっぽを向いた。
心痛くして目を背けた。逃げでない。
仕方ないことである。
なんて思ってると、
「…うぐっ」
まさかの後ろからの奇襲攻撃。
「蛙みたいな声ー」
耳元で、無駄に甘ったるい声がヘラヘラ笑っていた。
てゆーか、蛙って何。蛙て。
乙女に対して、無礼だと思わぬか。
「そもそも、急に抱きつかれて、キャッて言う子は家で言う予行練習してんだって」
意味不明。彼の甘い声はそう言葉を紡いだ。
あぁ、慣れって怖い。
この彼の急な抱きつきにも、耳元の甘い声にも、慣れてきた。
しかし。
「はるるん、今、胸、触ったでしょ」
「えー、そうなのー?美沙ちゃん胸ないから、知らずに触ったかもー」
心砕けるブロークンマイハート。
彼の精神攻撃に耐性が出来ていない事が今後の課題なのは明白である。
──fin.
これも、エアラブのボツネタです。理由は前に同じ。