シークレットガール!【完】
***
「おっしゃあぁああああぁぁッ‼」
満点だ満点‼快挙だ快挙‼
「お前、初めてとか嘘だろ」
「マジです」
あたしの天職を見つけてしまったよ。
まさかのもぐら叩き。
嬉しいような何というか複雑マイハート。
そんな繊細ハート状態を気にもしない彼は、キッと恨めしそうにあたしを見ている。
べべべべ別にっ、この睨みサイコーーフォォォォオオォオとか思ってないからね!!
「…おい、もう一度勝負しろ」
「え」
さすがに飽きてきたんですけど。
と言いたいところだけど、いつもスルーしてくる志貴先輩が言っているので胸の奥にしまう。
嬉しい。
その一言に尽きるのだ。
「先輩、必死ですね」
「こんな変人に負けたとか嫌なだけ」
負けず嫌いでしょ、それ。
このあと、プリントクラブ、またの名をプリクラを撮りたかったのに。
時計をちらり見ると5時25分。
途中、30分はノートが切れてたから文房具店に行ってたとはいえ、やりすぎだ。
30分くらいオールもぐら叩きである。
そんなことを思いながら、お金をいれる志貴先輩を盗み見る。
少し汗をかいていて、いつもの無表情に近い冷たいクールな表情じゃなくて、男子高校生の顔だった。
子供っぽい顔だった。
こんなもの見せられて、もぐら叩きを止めようなんて言えない。
反則です、先輩。
音楽がなって、もぐら叩きが始まる。
このもぐら叩きは対戦形式でとなりで志貴先輩がもぐらに目を光らす。
そんなに一生懸命にならなくてもいいのに。
冷静になって全体を見て、力を抜いて叩く。
それが大切なような気がするんだけどなぁ。
ふっとあたしは笑みを溢した。
「お前、余裕って言いてぇのか」
「いえ。先輩可愛いなって。ほら、始まりますよ」
可愛いって言うな、という声が聞こえたのは気のせいだろうか。
もうどうでもいい。
だって、楽しいのには変わり無いのだから。