シークレットガール!【完】
ゲリラライブをしている男の周りにはもう人だかりが出来ていて、もう道は塞がれた。
うむ。予定通り。
「1曲目いきます!❬野球❭!」
そうゲリラライブの男はマイクを通して言うと、ギターを引き出す。
何故に駅前でするのか、疑問だ。
迷惑極まりないのに。
うん、いつものあたしなら睨んでたけど、今日は笑顔で見ててあげるよ。
「あーあー、夏が終わるー。君の笑顔もーこれで終わりー。ただー俺は俺は見たかったのさー君の笑顔おおぉがー」
青春っすね、この歌。
そう思いながらミルクティーを口に運ぶ。
「呼んだら振り返ってくれる君ー。俺ってすごく幸せだなー。君が君が君で良かったー。ホントに君で幸せだったよー。だからー僕のきゅうりになってー!」
ん?待って。
聞き間違いでしたっけ?
最後きゅうりになってなんて聞こえたきがするんですけど!
意味不明なこと、急にぶちこんできた気がするんですけど!
こんな気持ちとは裏腹に曲はサビに入る。
「あぁー君はー僕の運命のきゅうりだー。君が僕のきゅうりになってくれー。きゅうりの、君のお母さんやーーーーっ、きゅうりを俺にくださいーーー」
ごめんなさい。マジで意味不明なんですけど。
おれのきゅうりって何。
頭のネジが緩んでんじゃないの俺。
あ、でも曲名の<野球>って意味は分かった。
『きゅうりの、君のお母さんや、きゅうりを俺にください』
って歌詞の『君のお母さんやきゅうりを』に注目。
そして、『さんやきゅうり』をもっと注目。
『んやきゅうり』をもっともっと注目。
そしたら、『やきゅう』と出てくる。
極めて分かりにくい。そして、意味不明だ。
何故そこをビックアップしたのか謎。
ほんとにこの人有名なの?
最近の流行りというのは分からんっ。
視線をゲリラライブからミルクティーに写すと、
──からんからん。
店の鈴がなる。
来た。来た。
待ってましたよ。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
「はい、ではこちらへ」
店員さんは彼らを笑顔で誘導する。
彼らが案内されたのは、あたし達の席の後ろ。
何もかもが計画通りだ。
やっぱ、持つものは友だと思うね。うん。
友達は大切。