未知の世界
突然



暖かな陽気の昼下がり、校庭から楽しそうな笑い声が聞こえる。

揺れる窓ガラスのカーテンをよけると、外では十人程の男子がサッカーボールを蹴りながら走り回る。



なんでこんな素敵な日に学校なんだろう。



すると教室の隅に設置された放送マイクから、ジリジリと

マイクをいじる音が漏れ、

『連絡します。

 鈴木かなさん、鈴木かなさん。

 放課後、担任の筒井先生のところまで来てください』

部活での顧問からの呼びだしはたまにあるけど、担任からなんて、初めてかも。

筒井先生は私の事情を細かく聞いてこないから、私にとっ
 
てはいい人に入る。

だけど、慣れない呼びだしと校内に放たれる私の名前。

胸の高鳴りを押さえて、次の授業の支度をした。



今日は部活は休み。

なんでもPTA総会がおこなわれるみたい。

たまにはテスト以外でボールを触らない日があってもいい。

テスト週間中はやたらと触りたくなるけど。




#放課後#


職員室に入り、窓際の筒井先生のもとへ。

職員室に入る時って、やたらと緊張する。

パソコンに集中する筒井先生の横顔に、

「鈴木かなです。放送を聞いて来ました。」

と言うと、私に目を向ける筒井先生。

「あぁ」

といいながら、反対の席に座る保健の田中先生に

「来ました。」

と伝えると席を立ち、微笑みながら筒井先生のそばに歩いてきた。

「ごめんなさいね。せっかくの部活のお休みなのに。」

と言う田中先生に、私は、

「いえ、大丈夫です。」

と答える。

田中先生は、微笑んだまま、

「先日のね、健康診断の結果が病院から届いたの。

健康診断を担当してくれたやごな総合病院から、あなたに

もう一度病院での再検査をと言われて。」



えっ。


病院。


私、どこか悪いのかな。

「ごめんなさいね。それがね、病院からの検査は一週間前

に届いてたのだけど、私が出張していて、最後まで目を通

したのが今日なの。

病院は、一週間以内に再検査に来てほしいと書いてあるの。

本当に、私が悪いの。ごめんなさい。

突然で申し訳ないんだけど、これからやごな総合病院へ行

けないかな。

病院へは、私が連絡しておくから、受付で学校名と鈴木さ

んのお名前を言って再検査を受けて欲しいの。」


これから。    


職員室に呼ばれるやすぐに再検査って。


病院なんて、お金かかるし、ましてや体を見せるとなると、奴が黙ってない。

すると返事のない私を見てか、筒井先生が、

「悪いな、突然。

施設の館長さんには、先生から説明しておくから、まずは病院が終わる前に急いで行ってほしい。

ただ病院まで送ってやりたいところなんだけど、今日は、かPTA総会で、これから会議なんだ。

一人で行けるか?」

と申し訳なさそうに言う。

私は、

「ええ、大丈夫です。」

と筒井先生と隣にいる田中先生に言い、学校を後にした。

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