未知の世界
診察室に入ると、左の壁には机とパソコンが置かれ、右には真っ白なシーツのかかったベッド。



机の前の椅子には、真っ白な白衣に、青色の術衣を着た30代前半くらいの先生が座っていた。


私が診察室に入るとすぐ、こちらを向く。



少し怒ってるのか、目つきが怖い。




髪の色が真っ黒からか、また怖さが増す。



出入口で固まっていると、看護師さんに背中を押され、重い足を動かし椅子に座った。




すると、先生が、





「以前、うちの病院からそちらの高校で健康診断をした医師から、君が再検査をする必要があると判断したため、今日は来てもらいました。
今からここで診察後、別室で血液検査、ピークフローの測定をしてください。
ピークフローというのは、君がどのくらい一回の呼吸で息を吸えているかを測定した数値です。
一先ず、ここでは診察を始めます。
まずは口を開けて、『あー』って言って。」







次々と説明され、いまいち理解をしないまま口を開けた。










口の奥にペンライトと棒を入れられる。






「けほっ」









これ、苦手だなぁ。






喉診るのに、この棒を入れられると、余計喉が乾燥して痛いや。

 

 


先生は、私の咳込む様子を見ながらも、あまり気にしない様子で、私をまっすぐ見つめ、次は頬の下の首元を両手で強く押す。









走ってきたせいか、顔が熱く、先生の手が冷たくて気持ちいい。










「次は胸を開けて」







きた。







と我に返る。











私が一番恐れていた診察。











早く先生に言われた通りにしないと、怒られる気がしたのか、服を少し前に浮かしてみた。












眉間にシワを寄せて、困った顔をしながらも聴診器を持つ手を服の中に、入れてきた。













ピタッ













とくっつく冷たい聴診器。









まっすぐ、どこを見てるのか、一点を集中している先生の目をボーとしながら見つめる。

 







聴診器の冷たさに気持ち良くなりはじめたところで、診察終了。










あまりお腹を見られないようにと、慌てて服を下ろす。








すると机に向かってなにかをカルテに記入した先生が、机の上の体温計を私に向け、








「熱測ってなかったね。このまま測って。」







と言い、体温計を渡す。








首元から、左の脇に体温計をすりこませ、熱を測る。







またも冷たくて気持ち。








少しすると音が鳴り、体温計を取り出すと熱は36度5分。







先生に渡すと、






「低体温って知ってる?」








と尋ねられ、








「知りません。」



と答えると、






「大抵の人は平熱が36度くらいなの。でも、低体温症の人は、35度くらいが平熱で。
低体温症の人はその人なりに、大抵の人と同じように、普段の熱より一度でも体温が、上がればそれなりに体が熱を持って、だるくなることもあるんだ。」








「そうなんですか。」






「君の普段の熱は?」







「わかりません。熱なんて、測ることがないので。」







と返すと、一瞬驚いたような表情をしたものの、すぐに先生は、
  





「分かった。」







と言い、これから血液検査とピークフローの測定へ行くように私を促した。

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