未知の世界
~その頃、医局では~
佐藤先生と早川先生が深刻な顔で話していた。
「ピークフローも全く良くなっていない。
むしろ入院してから、悪化してるな。」
と佐藤先生がいう。
「今日、検査前に聴診したときは、喘鳴がものすごく聞こえました。
本人は気づいてるのかわかりませんが、呼吸が途中で荒くなることがあります。」
と早川先生が話す。
「日中は喘息がないようだが、夜中に出ているかもしれない。
当直医にも気をつけるようにお願いしておく。」
と深刻そうな顔で検査結果をみつめていた。
「それから、午後にナースが、掃除の方から屋上に落ちていた吸入器を拾ったと言われ、吸入器を僕に持ってきました。小児科用の物です。
誰のでしょうか。」
と早川先生が、佐藤先生に言う。
「誰だろうな。もしかしたら、鈴木かなのものかも知れないな。
以前発作が起きた時に、吸入器を持っていないことがあったから。
それに、屋上で寝ていて風邪を引いたことも。
どこら辺に落ちていたんだ?」
と佐藤先生が聞くと、早川先生は、
「屋上のタンクの近くだそうです。」
と言った。
佐藤先生は、
「また離れたところだな。
今度屋上を見に行ってみる。」
と言った。