未知の世界
『血液検査』


と書かれた部屋の前へ歩いて行くと、診察室から連絡がいったのか、またも部屋の前に看護師さんがいる。





「お名前は?」







「鈴木かなです。」



「わかりました。それでは、これから採血しますので、この札を持って部屋に入ってください。
腕に採血しますので、どちらかの腕が出るように袖を巻くって置いてくださいね。」





と言われると、部屋の中に通された。







そこは、病院に入った時よりも強い消毒の匂いがした。






部屋にいた別の看護師さんに札を渡すと、丸い椅子に座るよう言われ、座る。





いよいよ採血か。





注射器やガーゼの入ったキットが用意された。








巻くった左腕を差し出すと、ゴムできつく腕を縛られた。







結構きつい。










ハッ
  


 

その様子を眺めていたが、すぐに気づいた。












左腕、タバコを押し当てられた跡。


















忘れていた。


 






服を着ている体だけでなく、腕にもあったことを。









幸い、腕の外側だったことからか私の肌が毎日の部活で、日に焼けていたからか、看護師さんに気付かれず、何も言われずに終わった。











そんなことを考えていると、いつのまにか採血は終わっていた。

 







次は、ピークフローを測定するため、診察室で渡された案内図を見ながら、3階へ行く。






『呼吸器内科』







とその階には書かれていた。



階段を上がりきり、廊下を進むと



『第三処置室』



と書かれ、ガラス張りになり外から見れるようになっている。







部屋の中には、白い煙りを出した機械や、その前には椅子が並び、テレビドラマで見たことのある口に当てるマスクや煙りの出ている筒状の棒かぶら下がっていた。









その機械の前には、男性が一人と小学生くらいの男の子がそれぞれ口に筒状の棒を当てて座っていた。







これ小さい頃に行った耳鼻科で、見たことある。

  






その機械とは反対側の壁の方には、診察室同様の机と丸い椅子が二つ。








私が部屋に入って立ちすくんでいると、診察室にいた先生が現れた。











「この椅子に座って。」








と言われ、頷いて椅子に向かう。






そして、緑色をした筒状の棒を渡された。




「これがピークフローの測定器。口に加えて、一気に早く、強く拭いて。」





言われたまま、口に加えて、一気に早く、強く。







「げほっ、ハッハッハッ」






「フー」






むせたことに恥ずかしく、すぐに息を整えた。














先生は私をじっと見ている。







何か言おうよ。







と心の中でつぶやくと、私の心の声が聞こえたのか、






「もう一度、熱を測ってみて。」








と体温計を渡された。







私は、渡された体温計を脇に入れた。








さっきよりもずいぶん冷たい。









音がなり表示を見ようとする前に、先生が手を伸ばし、私の体温計を取り、表示を確認した。











「37度8分。」










とつぶやく先生に、思わず









「えっ?」









と聞き返していた。







「君が低体温症かわからないけど、もしそうなら、普通の人でいう39度くらいだな。
40度近くの熱と変わらない熱だ。」


  






そうか、私、熱があったんだ。
何年ぶりだろう。熱自体をあまり測ることがなかった。
学校での健康診断なんて、自分で適当に熱を書いてたし。










と、いろいろ考えていると、先生が、








「最初の部屋、診察室が空いてるから、そこで横になりなさい。もっと熱が上がるようなら、点滴をするから。 
血液検査の結果には1時間くらいかかるから、それまで休んでなさい。」










と言われ、








「ありがとうございます。」








と言い、処置室を出て行った。


 






どうりで体が熱い訳だ。
走ってきたからか、病院が暖かいからなのか。
いろいろ考えたけど、熱があったのね。











先生に言われた通り診察室へ行くと、始めにあった看護師さんにベッドへ通された。
 
   






「何かあったら、壁にかかってるナースコールを押してね。」









と言われ、看護師さんは出て行った。


 





これがドラマで見たことのあるナースコール。









ところで今何時なんだろ。
  










   



ん?痛い。





頭が重い。





またか。










目を開けると白い天井。











自分がどこにいるか、一瞬わからなかったけど、左を見ると壁にかかったナースコール。









そうだ、さっき病院の診察室で寝かせてもらったんだ。








と思い、重くなった頭と一緒に体を起こす。








閉められたカーテンを開き、ベッドの側の靴を履いた。








服を整えていると、そこに先生がやってきた。













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