未知の世界
花火大会一週間前、翔くんの退院の日が決まった。
「来週の水曜日。花火大会の数日後に、退院が決まった!」
と嬉しそうな翔くん。
私たちは皆で喜んだ。
次は誰が退院だろう。
「花火大会の日、楽しみだな。」
と翔くんが小さな声で話しかけてきた。
「うん!佐藤先生が当直だといいなぁ。」
と私が言うと、
「その日、当直らしいぞ。言ってた。」
えっ!そんな偶然にも、花火大会の日だなんて!
「やったね!あとは、勉強会がなくなるのみ!」
「そうだな。」
花火大会、私は、ものすごく楽しみにしていた。
「何をにたにたしてるんだ。」
ハッ!
振り返ると佐藤先生と早川先生。
「何か楽しいことでもあった?」
と早川先生に聞かれる。
「い、いや、、、翔くんの退院が決まって喜んでたんです。」
となんとかごまかした。
「かなちゃんも早く退院できるといいね。」
と早川先生が、ほほえむ。
この笑顔についつい調子に乗って、
「どうなったら退院って決まるんですか?」
と聞いてみた。
「もう少し喘息が落ち着いたらだね。数値は、良くなってるよ。」
と言われ、もうすぐ退院できるかもしれないと、浮足が立った。
すると。そんな私を見ていたか、佐藤先生が、
「大人しくしてないと、長引くぞ。
退院してからも、はしゃいでるとまた病院に戻ってくることになるぞ。」
と。
いつまでも鬼だ。
まぁ、いいや。
「大丈夫です。絶対に高校を卒業してみせますから。」
早く退院して、高校を卒業しなきゃね。
「将来の夢はあるのか?」
と佐藤先生から聞かれた。
う、考えたこともない。
「い、、、や、
考えたことも、、、ありません。
来年には、施設を出てるので、とりあえず働いてお金を稼ぎたいです。」
と答えると、佐藤先生の返事はなかった。
何か考えているようだった。