未知の世界
花火大会当日の夕方。
夕方の回診には、早川先生がやってきた。
「今日の佐藤先生の勉強会なんだけど。
今緊急でオペに入ってるから、中止だそうだよ。」
やったぁ!
私と翔くんは、顔を見合わせ、目で喜びを分かち合った。
「ん?どうした?」
と早川先生に聞かれ、
「いや、たまには勉強もお休みだと頭を休めれるなぁって思って。」
と、全く思ってもないことを適当に答えた。
「そうだね。毎日勉強してるもんね。佐藤先生、スパルタ?」
「まぁ、そこそこ。私は大丈夫だけど、翔くんは、こてんぱんにやられてる(笑)」
と私が答えながら翔くんを見たけど、翔くんは、花火大会のことしか頭になさそう。
私たちの会話すら聞いてないみたい。
そして、食事をとり、吸入を済ませた。
私と翔くんは、勉強会のないときくらい早く寝よう、なんて言いながら、いつもより早めにカーテンを閉め、こっそり廊下を出て、屋上に向かった。
夜でも屋上の鍵は開いていた。
二人でいつものベンチに腰掛けて、花火大会を待った。
「ぁあ!良かったぁ!勉強会なくてー!」
と、翔くんが伸びをした。
「ほんとー!夜の外も気持ちいいし、最高だね!」
と私は言いながら、夜空を眺めた。
ちらほら見える星。
花火はまだ上がらないけど、夜空を見ているだけで、時間がつぶせる。
すると、
ピューーーーーーー
ドーーーーーーーーーーーーン!
と、真っ赤な花火が打ち上がった。
「わぁ!」
私はあまりにもきれいで、ベンチから立ち上がっていた。
初めてみた。
こんなに大きな花火。
「綺麗だな。」
と翔くんも花火にみとれて言葉数が少なくなった。
できることなら、この綺麗な花火を写真でおさめたいと思うものの、一瞬たりとも目を離すのがもったいない。
20分ほどが経ったころアナウンスが入った。
少し休憩みたい。
すると突然!
翔くんが私の方を振り向いた。
「んっ。」
私に、、、、
キ、、、、、、ス
し、、、、、、
てる?
私はビックリして、翔くんから体を離した。
「ご、ごめん。
かなのこと、、、、
好きで、、、、、。
その、、、、
気持ち伝える前に、、、
キス、、、して、ごめん。」
「えっ?あっ、、。
えっ!?」
私のこと?好き?
えっえっえっ!?
私は頭が真っ白になっていた。
「ホントにごめん!」
私は思わず黙ってしまった。
すると
「お、おれっ、
何か飲み物買ってくるっ!」
といい、慌てて立ち去った。
えっ?
翔くん、私のことが好きだったの?
今、そういったよね?
私は、翔くんを嫌いではないし、好きといえば好きだけど、、、
うーん。
今まで、誰かを好きになったことなんて、なかったから、分からない、、、、、。
なんて、一人で考えていると、再び花火が上がった。
翔くんのことがあって、ボーとしてしまい、さっきのようには、花火を見ることができない。
すると、
「けほっ」
ん?
「ゲボッ!ゼィゼィゼィゼィゼィゼィ。」
うっ、苦しい。
と前を見ると、辺り一面煙りだらけ。
うそ、なんで?
あっ、花火。
打ち上がる位置が、
変わって、煙りが、、、
こっちに来てる!?
「ゲボゲボゲボゲボゲボ!ゴボッゴボッ!ヒューヒューヒューはぁはぁ。ヒューヒューヒューはぁはぁ。」
変な音が出てきた。
「ヒューヒューヒューゼィゼィ。ヒューヒューヒューゼィゼィ。
ゴボゴボゴボゴボ!」
息が、、、
でき、、、、
な、、、い。
吸入器、、、
あれ?
ポケットを探したけど、見つからない!
うそうそ、
なんで?
ないの?