未知の世界
光が部屋を明るくしはじめた。
春は、夏と同じで日の出が早い。
6時前だろうか。
ようやく明るくなったと、安心していると次第に眠くなった。
「鈴木かなさーん。おはようございます。」
ん?
眠い。
「先生もうすぐ来るからね。
診察の準備しますね。」
と言い、私に看護師さんから体温計が渡された。
初めて見る看護師さん。
私は目を擦りながら、看護師さんを見る。
「今日からかなちゃんの担当の近藤です。
何かあったら、私でもいいし、他の看護師でもいいから聞いてね。」
と言われ、うなづきながら私は、体温計を近藤さんに渡した。
ガラッ
「おはよう。昨日は寝れた。
昨日言ってた君のもう一人の担当の先生。
研修終えて間もないけど、優秀な先生だ。」
と佐藤先生は隣にいた背が高くて、優しそうな顔の先生を紹介した。
「おはよう。覚えてるかな?
高校へ健康診断にいった早川壮大(はやかわそうた)です。よろしくね。」
と笑顔で言う。
私、こういう優しい男の人、すごく苦手。
まだむすっとしてるけど、必要なことしか言わない感じの佐藤先生の方がましだ。
私は黙ってうなづく。
次に佐藤先生が、
「他にも小児科の先生はたくさんいる。必ずしも僕たちが回診に来れるとは限らないから。
もう逃げずに治療を受けなさい。」
と言う。
私は、眠いのを必死で我慢していたので、目を開けているのに精一杯。
すると佐藤先生が私のベッドの横の椅子に座り、
「胸の音を聞くから、ボタンを開けて。」
と言うが、昨日程の恐怖よりも、睡魔が襲ってきた。
手を動かさずにいると、看護師の近藤さんがテキパキと開け始めた。
嫌がる隙も与えない。
近藤さんが、私の右手をギュッと握ってくれた。
私の恐怖、この人は分かってくれてるのかな。
私は、安心したあまり、そのまま眠りかけた。
胸の音を聞いた佐藤先生が、
「昨日寝れなかったか。
今日は、頑張って起きていなさい。
でないと、また今夜も寝られず、昼夜逆転してしまうから。
それから、午前中には、喘息を治すために毎日、ステロイド薬を吸入してもらう。
この小児科の病棟は、4階。吸入は昨日行った第三処置室のある3階になるから、歩いて行くように。
それから、ここは小児科に小学生から高校生までがそれぞれ勉強する院内学級が同じ階にある。
朝の回診で行かないように言われない限りは、そこで勉強ができる。
ほとんどの子が長い入院生活を送っているから、院内学級に通っている。君も行きなさい。
今日の様子なら行けるから。
くれぐれも走らないように。」
私は、眠くてあまり佐藤先生の話が頭に入らなかった。
診察を終えて、先生と看護師さんが出ていくとそのまま眠りについてしまった。