タカラモノ~小さな恋物語~




「先ほども言ったことなのですが…

私は大学で健吾くんの所属しているサッカー部のマネージャーをしています。同じ1年生です。」



宇野さんはぽつりぽつりと話した。



「単刀直入に言いますと、私、入学式のとき、健吾くんに一目惚れしてしまったんです。」


「一目惚れ…」


「はい。でも入学式の時に見かけただけで、学部も違っていて。
一体彼がどこの学部で、何という名前の人なのか…情報が全く掴めませんでした。

でもしばらくして、経済学部の1年生でカッコいい男の子がいるって女子の間で噂になったんです。そして、その人はサッカー部に入ったって…」


「それが、ケン…。」



宇野さんは頷いた。



「私、気が付いたら夢中で動いてました。とにかく健吾くんとお友達になりたくて、サッカー部のマネージャーになって機会を作ろうって。

でも、現実は簡単ではなくて…私の思い描くストーリーなんかに1ミリもなりませんでした。」




私はただ黙って聞いていた。




今、私の目の前には、ケンを好きだという可愛い女の子。


そして、ケンは大学でも噂になっちゃうようなカッコいいと思われる男の子。




また私の知らないケンが現れるのか、と思った。





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