タカラモノ~小さな恋物語~
こんな気持ち気付かなければよかった。
きっとそうすれば、今まで通り楽しくて、笑っていられる毎日だったはず。
ケンのこと、こんなに好きなんだ、私。
こんなにも大切に思ってるんだ。
せっかく分かったのに、皮肉にもケンには好きな人がいるんだね。
神様はどうしてこんなにも意地悪なの…?
「ももてぃ、今日はほんとありがとな。」
「ううん、こちらこそ…」
「来てくれた時、すげぇ嬉しかった。本当は自信なかったからさ、来てくれないんじゃないかと思って。
水族館なんて、俺と行くような場所じゃねぇし、そもそも宇野のことがあったばかりだからさ。」
私は小さく首を横に振った。
「私こそ、電話もらった時、嬉しかったよ。本当は、宇野さんと水族館、行って欲しくなかった…。」
「ん?なんで?」
「え…それは…」
ケンのことが好きだから。
それ以外答えなんてない。
けれどそんなこと言える勇気もなく、電車は駅へとついてしまった。
「家まで送るよ。」
「ううん、親が駅まで迎えに来てくれるから大丈夫。ありがとう。」
「そうか、遅くまでごめんな。」
「なんで謝るの?楽しかったよ、ありがとう。」
今日の最後は笑っていたい。
苦しいけれど、楽しかった1日は事実だもん。
「おみやげ、みんな喜んでくれるかなぁ?」
「つかその前に色々突っ込まれそうだよな。」
「あ、そ、そっか…どうしようね。」
私は苦笑いをした。