タカラモノ~小さな恋物語~
「ん?ももてぃと水族館デートしてきましたって答えるしかないな。」
「っ…」
ニッと笑うケンに私は言葉が詰まった。
―――水族館デート。
ねぇ、ケン、これはデートって捉えてもいいの?
今日1日、デートだったの?
「じゃ、ももてぃ、また次のバイトでな。」
「うん…またね。気を付けてね。」
ケンは家へと帰る方向に、私はロータリに向かった。
親を呼んだなんて嘘。
本当はバスで帰る。
でもバスで帰るなんて言っても、ケンのことだから心配だからって絶対付いてくるもん。
嘘、ごめんね。
ちょうどバスは来ていて、そのまま乗った。
家のほぼ前にバス停があるから本当に電車を使うときは助かる。
お母さんからの連絡を確認する。
お昼に私が送ったメールの返信で【了解。遅くならないようにね!】。
そして今さっききた【そろそろ帰ってくるのかな?駅に着いたくらいに1度連絡ください、何なら迎え行こうか?】
「大丈夫、今からバスで帰るよ…っと、送信。」
スマホを鞄に戻して、深く座席にもたれ、目を閉じる。
なんだか、今でもドクドクと胸の鼓動がせわしく鳴っていた。