タカラモノ~小さな恋物語~



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寒さもすっかり和らぎ、桜の開花宣言があちらこちらでされている4月。


「もうすっかり春だねぇ…」


店長がのほほんと窓の外を見ながら呟く。


「お客さん、また最近増え出したね。」


鈴音さんがゴソゴソ整理をしながら呟く。




なんていうか、平和な金曜日の昼下がり。


ケンは今日、サッカーの地区予選って言ってたっけ。


相変わらずな私とケン。


私は何も伝えられないどころか、どんどんケンが好きになる一方だった。


ケンの好きな子が一体誰なのかは、分からないまま。


鈴音さんには何度も付き合いなよ、と言われる。

告白しなよって…。



ちはるには会う度に、言われちゃう。


この間一度、お店に冷やかしに来たくらい。


さすがにあれには焦ったけどね。


けれど、その周りの応援は鬱陶しいと思うどころか、むしろ嬉しかった。



どことなく元気付けられた。


まだ、私、ケンを好きでいていいんだって。



一方でケンはよく分からないことばかりする。


好きな子がいると言っておきながら、私と水族館デートしたとみんなに自慢気に話すし、今度は動物園に行こうとか、遊園地に行こうとか言い出す始末。


もう意味が分からなくて、私の頭は付いて行かなかった。




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