タカラモノ~小さな恋物語~
ケンが、お店を辞める…?
「なんでも、サッカー忙しいみたい。もっと本腰入れてやりたいのと、あとスポーツトレーナーの資格も取りたいから勉強するって言ってたっけ?」
「……。」
なんで、ケン…?
私、何も聞いてない。
そんな大事なこと、どうして…?
「びっくり、飛鳥ちゃん絶対知ってると思った。」
「え、あはは、私、何も…」
つまり、私なんかは知らなくてもいいってこと?
ケンにとって私ってそれくらいの存在?
なんで、そんな、どうして…
突然のことに私の頭は何もついていかない。
それどころか、心が悲鳴を上げているような気がした。
「それ、いつ言ってたんですか…?」
やっとの思いで鈴音さんに聞く。
「先週くらいだっけ?ね、店長?」
「そうだね、先週…言ってたね。」
そっか…
そんなに前から。
私、その間、ケンと何回も一緒に仕事してるのに。
そんなこと、ケンは一言も言わなかった。
「……。」
結局、私がケンに振り回されてばっかりなんだ、私の方がペース乱れっぱなし。
ケンの言うこと全部に、敏感に反応しちゃって、ドキドキしちゃって…
それでも、楽しかった。
なのにケンにとって、私はその程度の存在なの…?