タカラモノ~小さな恋物語~
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「もしもし…?」
「ん、珍しいな、どしたの?」
「あのね…」
その後バイトは、本当に4時にあがった。
店長と鈴音さんには本当に感謝。
そして、今、私はケンに電話をかけている。
もう後先のことなんて考えていなかった。
ただ、今はケンに会いたかった。
「……。」
「ももてぃ?」
「あ、あの…試合で疲れているところ申し訳ないんですけど、今から会えますか?」
あまりに緊張していたのか、堅苦しい敬語。
この敬語が面白かったのか、ケンは笑った。
「なに、どうしたの?なんで敬語?」
「い、いや…」
「フッ、なんかよく分かんねぇけど、いいよ。大丈夫。」
クスクスとケンは笑った。
「じゃ…じゃあ、森林公園、来れる?」
「分かった、噴水の前で待ってる。」
電話を終えて、胸が高鳴った。
いつも会ってるはずなのに、なぜかドキドキが止まらなかった。
ケンの声を聞いて、やっぱり好きだと思ってしまった。
ケンがいなくなっちゃうなんて考えられないよ。
ケンのいないバイトなんて、考えられない。
だってお店に行けば、いつだってケンがいて、真剣に仕事をして、笑い合って、励まし合って、私にとってもうケンは無くてはならない存在。
ケン、お願い。
お仕事辞めるだなんて、言わないで…。
私は溢れそうになる涙をぐっとこらえて森林公園へと向かった。