タカラモノ~小さな恋物語~



「お店辞めるって本当なの…?」


ケンの胸に顔をうずめたまま聞く。


何も答えないケン、それが現実なんだと改めて突きつけられる。



「私…何も聞いてないよ。」


涙は、また溢れた。


ギュッとケンにしがみつく、まるでケンを離さないかのように…。



「ケンにとって、私はそれくらいの存在?

ひとことくらい言ってくれてもいいじゃない…っ

なんで、何も言わずに…、ケンの口から聞きたかったよ。どうして店長たちから聞かなくちゃいけないの…っ」



この胸の痛み、きっとずっと忘れない。



愛しい人が、いなくなってしまう寂しさ、悲しさ。



私、自分が思っている以上にケンのことが好きなんだね。



「なんとか言ってよ…っ」



黙ってるなんてズルい。


どうして何も言ってくれないの?



そんなに私のこと、嫌い?




私はそっと顔をあげる。


こんなみっともない顔、見られたくなかった。



「ケンは寂しくないの?私は寂しいよ…だって、だって…」



こぼれる涙を止めようと唇をギュッと噛む。


私は、ケンを見つめる。







「だって、ケンのこと、好きなんだもん…。」






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