タカラモノ~小さな恋物語~




「自分でも、もうびっくりだよ。こんなにもケンのこと、好きだなんて知らなかった。

でももう、後には戻れないよ。ケンのこと、本当に大切なの…。」



私はまっすぐ、ケンを見た。


ケンも視線を外さなかった。




優しいふわっとした風が吹いた。



「ごめん…。こんなこと言うつもりなかったのに…。

本当は辞めないでほしい、ずっと一緒に働きたい、ケンのそばに居たい。
わがままだし、こんなこと無視していいの。

ただ、伝えたかったみたいだね、私…」



私は力なく笑った。


涙を拭う。



恥ずかしい、結局私は何がしたかったんだろう?



中途半端にケンを責めて、泣いて、告白をして…。



少し冷静になって考えると、恐ろしい。




「な、なんか、中途半端にごめんね。多分、頭の整理が出来ていなかったんだと思う。

別に辞めるとか辞めないとか自由だし、私に言う必要もないもんね。やだなぁ、私何言ってるんだろう。

あはは、なんか好きとかそういうの、なんていうか…そ、空耳だと思って!」



急に恥ずかしくなって、私は弾丸のように話した。



ケンはそんな私を見て、フッと笑った。



そして―――……





< 150 / 157 >

この作品をシェア

pagetop