タカラモノ~小さな恋物語~
「自分でも、もうびっくりだよ。こんなにもケンのこと、好きだなんて知らなかった。
でももう、後には戻れないよ。ケンのこと、本当に大切なの…。」
私はまっすぐ、ケンを見た。
ケンも視線を外さなかった。
優しいふわっとした風が吹いた。
「ごめん…。こんなこと言うつもりなかったのに…。
本当は辞めないでほしい、ずっと一緒に働きたい、ケンのそばに居たい。
わがままだし、こんなこと無視していいの。
ただ、伝えたかったみたいだね、私…」
私は力なく笑った。
涙を拭う。
恥ずかしい、結局私は何がしたかったんだろう?
中途半端にケンを責めて、泣いて、告白をして…。
少し冷静になって考えると、恐ろしい。
「な、なんか、中途半端にごめんね。多分、頭の整理が出来ていなかったんだと思う。
別に辞めるとか辞めないとか自由だし、私に言う必要もないもんね。やだなぁ、私何言ってるんだろう。
あはは、なんか好きとかそういうの、なんていうか…そ、空耳だと思って!」
急に恥ずかしくなって、私は弾丸のように話した。
ケンはそんな私を見て、フッと笑った。
そして―――……