タカラモノ~小さな恋物語~
「ももてぃ。」
やっと、声を出したかと思うと、私の腕を優しく引っ張った。
「…っ、え、ケン…」
私はそのまま、もう一度ケンの腕の中に戻った。
今度はケンに導かれて。
優しくケンに抱き締められる。
「え、あの、その…」
「フッ、ちょっとしばらくこのままいさせて?」
あまりにも突然で、私は頭がついていかなかった。
今日は1日突然なことが多すぎる。
今は、私、ケンに抱き締められてるよ…
身体中が、一気に熱くなるのが感じた。
さっきは自分から、ケンにしがみついたくせにね。
「余韻に浸り中~」
「へ?」
ケンはそのまま、私をあやすように頭をポンポンと撫でた。
「やっと俺の勝ち。」
「はい?」
「ももてぃ、やっと言ってくれた。」
私の頭の中にハテナマークが浮かぶのをよそに、ケンはただクスクス笑うだけだった。
「店長たち、よっぽど演技、うまかったんだね。」
「演技…?」
「そ。」
ケンは私を離し、にっこりと笑った。
「俺がお店辞めるっていう嘘の演技。」
―――はい…??