タカラモノ~小さな恋物語~
「は、え…嘘?」
「うん、嘘。」
私は、言葉が出ずに口をパクパクさせる。
その様子を見て、ケンはクスクスとまた笑う。
「な、なんで…嘘って…」
「俺がももてぃの側から離れるわけないじゃん?」
「えっ…」
「前に言っただろ?俺、ももてぃのこと守るって。ももてぃの近くにいなかったら守れねぇだろ?」
「あ、いや…でも…。」
ケンはポンと私の頭を叩く。
いつもの優しいケンの表情、大きなあったかい手。
それに安心したのか、私はまたポロポロと涙を流した。
「ふぇっ…なんで…」
ケンが辞めるって聞いて、本当に悲しかったんだよ?すごく寂しかったんだよ?
なんでそんな嘘なんか…。
ケンは、自分の袖で「泣くなよ。」と困ったように笑いながら、私の涙を拭った。
「ももてぃ、さっきの言葉、本当?」
「さっきの言葉…?」
「俺への愛の告白。」
「…っ、あ、あれは、その…」
そ、そういえば…私勢いでとんでもないことを言ってしまった。
「え?嘘なの?」
「や…嘘ではないけど…その、なんというか…」
タジタジになる私を見て、ケンは笑う。
今日は、ケン、笑ってばかりだ。
なんか悔しい、なんて考えていたら、再びケンに腕を引っ張られ、優しく抱きしめられた。