タカラモノ~小さな恋物語~




「いや、私はいいよ。ケンの恋バナ聞いてあげるよ。今好きな人いないの?」


「いーまーせーんー!いたら今頃ももてぃと居酒屋いねぇって!」


ケンは笑いながらそう言った。


お酒のせいもあってか、いつにも増して陽気なケン。



「うわ、失礼な!」



「俺の話はいいんだって。ももてぃってさ、まだまだ謎なんだよね。

私生活とかいつも俺ばっかりで、全然話してくれねぇし。だから今日は聞く!」



「えー、話すことなんて何もないよぉ…。」



私はチビチビとお酒を飲みながら答える。


まいったなぁ…。



あまり自分のことを人に話すのは好きではない。


ケンならなおさら。


ケンに比べて、あまりにも生活が地味だから。




かといって、それについて自分が不満を持っているわけでもない、むしろ満足しているくらいだ。



一人でショッピングしたり、カフェ巡りをしたり、ドライブをしたり…。



多分、あまり他人からは共感は得られないと思う。



恋愛についても……同じ。




「えー、今まで彼氏なし?」


「いや、そういうわけじゃないけれど…。でもそれに等しいモンだよ?」


「いいって、いいって!聞かせてよ~!」



何がいいのか知らないけれど…。



はぁ、と私は小さくため息をついた。






< 35 / 157 >

この作品をシェア

pagetop