タカラモノ~小さな恋物語~
「いや、私はいいよ。ケンの恋バナ聞いてあげるよ。今好きな人いないの?」
「いーまーせーんー!いたら今頃ももてぃと居酒屋いねぇって!」
ケンは笑いながらそう言った。
お酒のせいもあってか、いつにも増して陽気なケン。
「うわ、失礼な!」
「俺の話はいいんだって。ももてぃってさ、まだまだ謎なんだよね。
私生活とかいつも俺ばっかりで、全然話してくれねぇし。だから今日は聞く!」
「えー、話すことなんて何もないよぉ…。」
私はチビチビとお酒を飲みながら答える。
まいったなぁ…。
あまり自分のことを人に話すのは好きではない。
ケンならなおさら。
ケンに比べて、あまりにも生活が地味だから。
かといって、それについて自分が不満を持っているわけでもない、むしろ満足しているくらいだ。
一人でショッピングしたり、カフェ巡りをしたり、ドライブをしたり…。
多分、あまり他人からは共感は得られないと思う。
恋愛についても……同じ。
「えー、今まで彼氏なし?」
「いや、そういうわけじゃないけれど…。でもそれに等しいモンだよ?」
「いいって、いいって!聞かせてよ~!」
何がいいのか知らないけれど…。
はぁ、と私は小さくため息をついた。