タカラモノ~小さな恋物語~
「純粋にさ、〝先生〟として大好きで、一番信頼してたし。
もちろん男としても魅力もあったけれど、恋愛とは違う何か……みたいな??うーん、言葉にすると難しいんだけどさ。」
「……。」
「これが青春だったのかなぁ?
先生と廊下ですれ違ったりとか、誰もいない教室とか、進路相談とか…なんか、こう、THE 高校生みたいな感じも、きっとよかったのかなぁ。」
「……。」
「ちょっと、ケン~!黙ってないで、何か言ってよ~!なんか私一人話していて恥ずかしいよ。」
「んー、いや、さっき言ってた1カ月半の彼氏っつーの?まぁ分からんでもねぇなぁ…って。
ていうかさ、そんなもんじゃね?高校生なんて。彼氏彼女が欲しいからとりあえず雰囲気で付き合うみたいな?」
「え、そんなことないよ!」
頭にちはると翔くんが浮かぶ。
「ちゃんと真剣に付き合ってる子たちもいる、そっちが普通だって!」
「まぁ、人それぞれだよなぁ。
フッ、昔からなんだな、ももてぃのアホっていうか、ピュアな感じ。笑える。」
「笑えるって、ひどい。」
ケンはクスクス笑いながらも、目線を逸らした。
「店長にしても、その学校の先生にしても、ももてぃ年上好きだな。おっさん趣味?」
「おっさんは余計!」
そう言って、私は最後のひとつの厚焼き卵を食べる。
ここの厚焼き卵、本当においしい。