タカラモノ~小さな恋物語~
「だって、どうせその先生も30歳過ぎたおっさんなんだろ?
店長にしてもそうだけど、なんでももてぃ、叶わねぇ恋しちゃうわけ?ぶっちゃけ彼氏とか欲しくないの?」
心の中で29歳です~!と呟くものの、言ったところで、変わんねぇよ、と言われるのがオチだからそこは黙っておく。
「うーん、彼氏ねぇ。」
「身近にいるだろ、手ごろなヤツ。なんつぅーか、もったいねぇよ。」
「じゃあ逆に聞くけど、ケンは?彼女、作らないの?ケンなんてすぐ出来そうなのに…。」
「それは…」
なぜか口を濁すケンに、「あ、もしや!」と私はひらめく。
「ケンも恋愛において、心の安定を求めるタイプ?」
「は…?」
「あー、分かる分かる!私もどちらかというとそっちだからさ。気持ち的にピンク色っぽいやつ、あんまり求めていないもん。
自分のそばにいてくれて、支えてくれるような。安定感あるそういう感じの恋愛がいいよね。」
「いや、別に俺は…」
「年上の人が好きになっちゃうのって、私がそういう感じを求めているからなんだろうな。同世代はやっぱり子供っていうか幼稚って感じがする。」
「……。」
「いや~まさかケンと恋愛の価値観、同じだったとは。でも共感者がいてくれると嬉しいなぁ。」
「はぁ…」
ケンはなぜだか、ひとつため息をつくと、残りの梅酒を一気に飲み干した。
「俺、めげずに頑張ろ!」
「え…?」
ケンはフッと意味深に笑うだけだった。