タカラモノ~小さな恋物語~
お酒を飲んだから、今日は電車に揺られて帰ること1時間。
ギリギリ終電にも間に合った。
「ただいまー」
時刻は日付が変わる寸前。
「おかえり、遅かったね~」
リビングから玄関にパジャマ姿のお母さんのお出迎え。
「うん、心配かけてごめんね。遅くなっちゃった。」
「お風呂は?」
「うーん、結構飲んだから明日の朝にする。フラフラするんだ、眠いしベットに横になりたい。」
「そ、お父さんがケーキ買ってきてくれたから、また明日食べよっか。」
「あーうん。ごめんってお父さんにも言っといて。」
そう私が言うと、お母さんはクスリと笑って私の耳元に寄る。
「お父さんね、何気心配してたのよ。いくら健吾くんだからって今日はクリスマスだからね。ずっとそわそわしてたんじゃないかしら?」
「えーケン?ありえないって。心配しすぎ!」
「うふふ、年頃の娘を持つ父親は大変ね。」
お母さんはそう言ってリビングに戻って行った。
私は、ため息をひとつついて部屋へ入った。