タカラモノ~小さな恋物語~




あの試合の日――――



初めて、職場以外でケンを見た。



まず顔つきが違った。



こんないつもは人懐っこい笑顔を見せてくれるのにそんな様子は無くて。



凛としたたくましい姿だった。



プレーもなんだかかっこよくて、別人みたいだった。



試合は2-1で残念ながら負けてしまったけれど、とてもいい試合だったと思う。



試合後ケンは笑って「ざーんねん、ももてぃにいいところ見せたかったのに。」といつもの笑顔で言ってくれた。



次の日の3位決定戦には勝ったらしく、堂々の3位という結果を収めた。





ケンは本当にサッカーが好きなんだな、と思った。


と、同時に仲間からもとても信頼されているんだなぁ、とも感じた。




私、ケンのことまだまだ知らないんだなぁって。


だって私の知らないケンがそこにはたくさんいたから…



やっぱり、ただただ職場が同じだけだという関係なんだなって。



私は勝手に、ケンとすごく仲がいいと思い込んでいたから、少しだけ距離を感じてしまった。




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