タカラモノ~小さな恋物語~
「はい、ももてぃ。こっち持って。」
「……。」
「…ももてぃ?聞いてんのかぁ?」
「へっ、あ、ごめん。え、えっと…」
「はぁーったく…」
ケンが困ったように腰に手を当てる。
「ももてぃ最近ボーっとしすぎ!らしくねぇよ?…え、何?そんなに店長のことで頭いっぱい?」
「えっ、違うよ!」
私は慌てて否定をする。
けれど否定すればするほど、なんだか嘘っぽくなる。
本当に違うんだけどなぁ…。
けれど、なんだかボーっとしてしまっているのも事実。
いけないいけない、集中しなくちゃ。
「なんで、年上がいいのか俺には分かんねぇなぁ。」
ケンは店長の話は聞いてくれるけれど、なんだかちょっぴり冷たい。
それがまた私の寂しさにつながる。
「ももてぃ、新店長さんに捕まんなよ~」
「え!捕まらないし!」
「いやいや、ももてぃのことだから、ちょっと年上に優しくされたらすーぐコロッといきそうだもんなぁ。」
「そんなに惚れっぽいタイプじゃありません~!」
「あーはいはい。んなムキになんなって。」
「なってないわよ!」
ったく、もう!!
ムキにさせてるのはどっちっていう話!
「じゃ、ももてぃコレお願いなぁ~」なんて言ったかと思うと、気付いたらケンは荷物を持って表の方に向かっていた。
「あ、ちょ、待ってよ~」
私も残りの荷物を持って、ケンの後を追ったのであった。