タカラモノ~小さな恋物語~



「あ、鈴音さん~、お待たせしました。」


「あ、ごめんね。」



鈴音さんによると、キッチン売り場の商品の配置が大きく変わると言う。



A4の束になった紙を私に見せてくれた。



「これ、本部からの指示。いいよねー、本部は。指示出すだけだもん。現場の大変さなんて分かってない。」



はぁ、とため息を漏らす鈴音さんだけど、数時間後にはこれをものの見事に完璧にこなしちゃうからやっぱり凄い。


「ごめんけど飛鳥ちゃん、手伝ってもらってもいいかな?」


「あ、はい。もちろんです。」


「ありがとー!あ、それよりさ…」



鈴音さんは声を少しひそめた。



「アイツ、気をつけなよ?」


「え?」


「大村悟!けっこう軽い男みたいだから。」


「え…?」



大村さんが…?



「店長から聞いてるんだけど、行く研修先ですーぐ女の子に手出してる。確かな証拠がないみたいだから、上も注意できないみたいだけど。

この店だと、ターゲットは絶対飛鳥ちゃんだからね。もうさっそく声かけられちゃってるみたいだし?」



「は、はぁ…」



そんな、あんなにいい人そうなのに?



喋った感じ、軽いなんて感じなかったけどなぁ。


柔らかな雰囲気の大人の男性って感じ?




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