タカラモノ~小さな恋物語~
それからお客さんが地味に多くて、レジ作業をしていたら、あっという間に閉店間際。
「はぁ、疲れたぁ…」
「フフフ、百瀬さん、お疲れ様。」
店長がクスッと柔らかい声で言った。
「なんか、後半バタバタしましたね。」
店長にもレジ応援してもらったし。
「忙しかったね。」
「…あれ、店長。大村さんは?」
さっき見たときは、その辺にいた気がする。
「あ、裏でパソコン入力とかしてもらってる。それより百瀬さんってさ…」
「はい?」
「相川くんと何もないの?」
「へ…ケンですか?」
店長は、眼鏡をかけなおしながらまたクスッと笑った。
「相川くんと百瀬さんなら、お似合いだと思うんだけどなぁ。」
「えー!!無いです!」
もうまたこういう話かぁ、もうケンはいいよ。
ていうか、店長にそれ言われちゃうと一番辛いやつ。
「……。」
……あれ、おかしいな。
意外とダメージ無いかも。
「二人、本当に仲良いなぁって思う。相川くんと百瀬さん見てると、いつも微笑ましい気分になるんだよ。宮本さんもそう言ってたし。」
「やだもう、鈴音さんまで…」
「本当だよ?心の絆っていうのかな、お互いの信頼関係も十分にある感じ。」
それを言うなら、店長と鈴音さんだって……と、危うく口を滑らしそうになる。
危ない危ない、私にこのことを聞く肝はとてもない。
心の中で、ふぅ、と呼吸をした。