タカラモノ~小さな恋物語~
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「短い間でしたが、お世話になりました。
ここで学んだことを活かして、新店長として励んでまいります。
皆さん、ありがとうございました。」
大村さんが最後に挨拶をした。
今日で大村さんと仕事をするのは最後。
なんだかんだで2週間はあっという間で、大村さんとは数回だった。
あれから、謝罪らしい謝罪も出来てなくて今日を迎えてしまった。
「大村さん、ちょっといいですか?」
店長が休憩の時、1人になった大村さんに声をかける。
「あ、うん。いいよ。」
「あの、その…この間は本当にすまませんでした。私の態度といい、ケンの態度といい。ケンの分も含めて、ごめんなさい。」
「相川くんね、いや、彼いいと思うよ。若くて元気で、ちょっと口が達者過ぎちゃってたけれど。」
大村さんは苦笑いをした。
「相川くん、この間謝ってきたよ。すみませんって。なんか色々言ってたけど…」
「え?なんて…ですか?」
「クスッ、それは男同士の秘密かな?」
えええ、秘密?
しかも男同士って…ケンと大村さん、なんだか仲良くなっちゃったのかな?
いや、良いことだけどさ。
「あの、それで、食事の件なんですが…」
私は大村さんの目をまっすぐ見ることができなかった。