タカラモノ~小さな恋物語~
「お疲れ様~」
お店を閉め、一日が終わった。
ケン、喜んでくれていたみたいだったし良かった。
少しだけ心が躍った。
「あ、ももてぃ…」
「ん?」
車に向かおうとした私に、ケンが声をかけた。
「この間、店長にもう気持ちないって言ったやん?」
「へ、あぁ、うん。」
そういえば、そんな話したっけ。
ケンは私の恋の相談窓口だもんね。
「じゃあ今はももてぃフリーってことだよな?」
「フリーっていうか…まぁ特に恋はしてないのかな?え、何、突然?」
「あ、いや、ううん、何でもない。……んじゃ、これサンキューな。お疲れ~」
「は?あ、うん…」
私の返事を聞くことなく、ケンは爽快に原付を走らせて帰って行った。
もぉ、何アレ。意味わかんなーい。
ケンの自由人には付き合いきれないわ。
私は、はぁ、とひとつため息をついて車へ向かって行った。