タカラモノ~小さな恋物語~
4*私の大切なモノは。
「いらっしゃいませ~」
今日も私は笑顔でそう言う。
寒さも和らぎ、春の訪れを感じさせるような晴天日。
お客さんの数も最近はまた増え始めた。
「あ、あの…」
「はい?」
後ろから声をかけられ振り返る。
そこには、年齢は私と変わらないくらいの女の子。
「あの、今日は健吾くんいますか?」
ん、ケン…?
「相川でしたら、本日は出勤しておりませんが…」
こんな雲一つない空とは裏腹に、なぜか私の中には雨雲が広がっていくよな気がした。
「相川に何か用件でしたら…」
「あ、いえ。そうじゃないんです。今日は健吾くんには用事じゃなくて…あなたにあって来ました。」
え…?
私…?
「あの、どういったご用件でしょうか?」
「ほ、本当に突然すみません。私、健吾くんと同じ大学でサッカー部のマネージャーをしている宇野紗彩と言います。」
あ、この子…思い出した。
どこかで見たことあるなぁって思ったんだよね。
前に一度、私が車の中からお店を見たときに、ケンと喋っていた子だ。
…ていうか、よく見るとこの子、けっこう今までもお店来てないかな?
常連さんというわけでもないけど、ちょくちょく見る気がする。