美女と獅龍

教室を出てから暫く 空き教室を見て回ったけど、都合良く 鍵が開いていた、なんてことはなくて。

最終的には立ち入り禁止の屋上、へ続く階段まで来た。

屋上に繋がるドアの前に座る。
……なんか、光が射していて 暖かいな。

そう思って、後ろを振り返ると ドアが少しだけ開いていた。

ラッキー。

私は立ち入り禁止の場所に足を踏み入れた。

転落防止の柵の近くまで歩みを進める。
上の方から街を見下ろすの好きなんだよね。

街をせかせかと歩く人たちを見ているのが。
理由はないんだけど、私が街を支配しているような気持ちになれて。

でも、ここから落ちると 死んじゃうよね。
そんなことを考え始めると 少し怖くなってしまって、私は柵から離れた。

昔、柵が腐っていた所為で生徒が転落死したことがあるらしい。
だから、この学校の屋上は封鎖されているんだ、って。

風の噂で聞いた。

今頃、教室では つまらない授業風景が繰り広げられているんだろうな……。
まぁ、別にどうだっていいけど。

でも、出席日数⁇とかのことも考えると 授業には出た方がいいと思うんだよね。

ただ、私の机は教科書を広げられるような環境にはない。

誰か、私の代わりに片付けてくれないかなー、なんて。

私の素性を知らない人たちが、わざわざ私の為にそんなことしてくれる訳ないよね。
< 31 / 427 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop