朋ちゃんと僕と、O中のみんな
ずっと前から古いポップスが好きだったから、僕はこの頃の気分は、この
「恋のかけひき」みたいな気分だった。

駆け引きをしてる、って言うんじゃなくて、軽快な気分だった。

可愛い女の子と自然に仲良くなって、自然に普通に居られる。

なんて生きているって素晴らしいんだろう、と思っていた。

NHKの「ステージ101」に出て「人生素晴らしきドラマ」を歌いたいような気持ちで
毎日暮らしていた。


もちろん、朋ちゃんも楽しいんだろうと僕は思っていた。
まだ中学生だから、2年F組のみんなと仲良く遊んでいるだけいい、僕はそんな風に思っていた。


でも、朋ちゃんはもうすこし、僕より大きな望みを持っていた。

なんか、時々ひどく静かなときもあったり、はしゃいだり、笑ったりと
落ち着かないなぁ、と見える日々が続いたある日....


僕は、いつものように放課後に屋上への階段、踊り場のところで
ギターを弾いていた。

朋ちゃんは、吹奏楽部の練習に言ったのだろう、この日はここに顔を見せなかった。


僕は、いつもみたいにアルペジオの曲をつまびきながら、窓の外の夕日をみていた。



....そろそろ、帰ろうかな。


と、思った時、3階から上履きを履いた女の子の靴音がした。


割と静かにあるくその歩調と靴音で、その存在が朋ちゃんだ、とすぐにわかった。


クラリネットを持っていた朋ちゃんは、僕を見つけ、いつものように笑うか、と思ったが

なぜか俯き加減に上目で僕を見、力なく笑い....



「ねえ、shoo...?」


なんとなく、いつもと違った気配を、僕は感じた。
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