朋ちゃんと僕と、O中のみんな
ECは陸上部の部長だったから、このクボを除名したいと
顧問の教師と争っていた。
ECにしてみれば、問題を起こすような厄介者だから
不祥事で出場停止、なんて事にならないように
これを口実に、クラブから追い出そうと
そう、政治的に画策したのだ。
コドモらしくない、そんな振る舞いは
好悪を大きく分けるようで
そんなECに好感を持つ子も居れば、嫌う子も居た。
それがはっきり分かれてしまうのは、まあ、その頃らしい。
オトナみたいにうわべだけ仲良く、なんて
便利なことをしないのも、コドモらしいと言えば、らしい。
でも、なにも今、怪我してるヤツを
陸上部から追い出すなんてかわいそう、って
皆はだいたい、そう思ってた。
だから....
いつもの放課後、朋ちゃんと僕は
いつものギター教室(笑)で、練習していた。
朋ちゃんは手が小さいので、バレーコードが押さえられないって
言いながら。
それでも頑張って押さえながら。
マメできちゃいそう、ッて指を摩ってた。
それで、ぽつりとこんなことを言う。
「ECってひどいよね」
何故、と僕が聞くと
「だって、死のうとしたんだよ、クボくん。
よっぽど辛いことがあったと思うの。
なのに、ケガしてるうちに陸上部から追い出そうなんて...。」
朋ちゃんは、誰にでもやさしい。
クボがどんなヤツかも知らないし、知っていても
たぶん、朋ちゃんの態度は変わらないだろう。
時代はラヴ&ピースの頃だ。
だから、皆が優しかった。
ことさら、朋ちゃんだけがやさしいのではないと思う。
でも、僕にはその笑顔と、アウトサイダー、クボにまで
優しい気持を持つ朋ちゃんに好感を持った。
特に、レンアイだとは思わなかったけれど
目の前にいるひとがとても大切だ、と
この時の僕はそう思った。